農山村の動向を分析する「持続可能な地域社会総合研究所」は、過疎市町村の人口動態を調査した。2014年と19年を比較して30代女性の増減率を調べると、3割の過疎市町村で増え、特に山間部や離島で増加が顕著なことが分かった。一方で転入より転出が進む過疎自治体も多く、若者が農山村を志向し移住する「田園回帰」は地域差が広がっている。 30代女性は出産、子育て期に当たり将来の人口にも影響を与えるため、調査した。総務省の住民基本台帳を活用し、14年の25~34歳と19年の30~39歳を比較した。研究所は他にも社会増減率、4歳以下増減率や30年後人口予測、安定に必要な定住数などの分析を、全自治体で行った。 過疎市町村での30代女性増減率は、鹿児島県三島村(179・3%増)、島根県知夫村(145・4%増)、北海道赤井川村(72・6%増)がトップ3で、離島や山間部が上位を占めた。 これに対し都心の東京都中央区は35・3%増。上位の過疎自治体の30代女性の増加率は、都会の自治体を大きく上回る結果となった。一方で大きく減った自治体も過疎地域に目立ち、特に近畿や東北の自治体で減少が顕著だった。 住民の転入が転出を上回る人口の社会増を達成したのは、調査した811過疎自治体のうち、1割の71市町村。5%以上の顕著な人口増を達成した自治体は14だった。 人口増は北海道占冠村(36%増)、島根県知夫村(26・3%増)、北海道赤井川村(21・5%増)が上位で、30代女性増減と関係する。続いて鹿児島県十島村(16・4%増)、沖縄県与那国町(15・8%増)、北海道留寿都村(15・3%増)などが目立った。 30年後の2049年の人口や高齢化率、子ども人口などを予測。人口の安定化に必要な定住増加人数の算出では北海道、新潟、長野、和歌山、島根、広島、高知、鹿児島、沖縄県にある合計20自治体が必要な定住増加を達成していた。
人呼び込み経済循環を
持続可能な地域社会総合研究所によると、人が人を呼び込み、地域内で経済を循環させる、個性ある地域づくりを進めている過疎自治体において、30代の女性や子どもが流入する割合が高いなど、「田園回帰」が目立つという。 同研究所の藤山浩所長は「移住者が入り込める余地を地域で生み出し、一種の生態系のような共生の仕組みを作っていることが共通点だ。うまくいっている地域と、厳しい地域で共通して、『何が起きているのか』を真剣に学び合うことが地方創生で必要だ」と強調する。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース